馬端臨・文献通考・陳垣




馬端臨

 宋末〜元初の学者、『文献通考』の著者として有名。『文献通考』は、1307(大徳11)年に成った。『文献通考』文献の文とは典籍、献とは賢すなわち賢人の意。毀誉褒貶が比較的少なく、詳細に制度を記述する態度は、地方史や慶元条法事類など、現存の南宋史料にも通ずるところがある。三通は政書であるが、ことに通典とならび、本書は項目毎にその沿革を述べる類書的な体裁である。『文献通考』は食貨を重視して版本は元刊本が良いとされる。
食貨を冒頭におく体裁は杜佑の通典に習うが、全巻数中で占めるバランスで比較すると、通典や通史に比較し、『文献通考』の場合は食貨・選挙・経籍の占める割合が大きく、その分、職官・礼などの割合が小さくなっている。周藤吉之氏による食貨部分の分析によって明らかなように、宋代部分の記事には、現存しない『宋朝国史』からの採録が多く、他にも現存しない諸史料を用いて書かれており、本書の史料価値は極めて高いと言える(「三朝国史食貨志と「宋史」食貨史との関係」『宋代史研究』,1969)。
 本書中「先公曰」としてしばしばその言が引かれる彼の父馬廷鸞も歴史家。馬端臨は、これ以外にも『多識録』153巻、『義根守墨』3巻、『大学集注』を著したとされるが、いずれも失佚している。

参考書として厳虞惇『文献通考詳節』(24巻・要確認)がある。 〔関連文献〕Hok-lam Chan " 'Comprehensiveness'(_T'ung_) and "Change"(_Pien_) in Ma Tuan-lin's Historical Thought in ___________、 呉懐祺「第10章 馬端臨的学術淵源和史学思想」『宋代史学思想史』黄山書社,1992。






文献通考

中国の諸制度を集成した書物。宋末元初の馬端臨の著。348卷。通典に習い、太古から南宋間の制度、沿革を24部門で記述。文献とは「論語」に由来し、文は典籍、献は賢人の意味。唐代中期までは通点の記事を補い、特に五代宋に関してはオリジナリティが高い。分類上は政書だが類書的な事典的正確をもつ。




陳垣

 1880-1971、民国期の歴史家、医学者、政治家。広東新会県の人。家業は薬材店で、知識人の家の出ではない。多岐にわたる活動のうち、現在最も評価されているのは、史学、特に宗教史や基礎的史料の整理である。
 当初科挙に失敗、故郷でくすぶっていいたが、広州に出て1905年ころから米国製品ボイコット運動や雑誌編集に加わる。のち再び帰郷、小中学校教師となる。ほどなく博済医学院・光華医学院に入り、卒業後生理学・解剖学の教鞭を取ったが、この間かなりの医学書と医学史文献を執筆。辛亥革命以後、衆議院議員に当選、このときより政治家として北京生活を開始すると同時に、北京の豊富な史料を駆使して歴史研究を本格化させた。そして歴史家として世に問うた第一作が、「元也里可温考」(1917年単行本として刊行、1934年「元也里可温教考」として改定版)である。
 この論文は、元代の漢文史料中に見られる「也里可温」の語について、「麻児也里牙(マリヤ)」「十字寺」「福分人(福音者)」などの記述から、キリスト教を指すことを確認、田中萃一郎、坪井九馬三らの諸研究を吟味してこれがアラビア語起源の蒙古語であるとする。さらに『至順鎮江志』戸口類の記事や税役制度を参照しつつ、也里可温教徒が社会的にもこの時期極めて隆盛を誇っていたことを仔細に明らかにする。内外諸家の先行研究を充分に参酌し、アラビア語・蒙古語の語源にまで遡って合理的な推察を重ねるこの研究は、発表と同時に日本でも大いに注目された。特に桑原隲蔵は、幾つかの実証的論点で建設的な批判を加えつつも、陳垣を当代支那には稀な学者として、高く評価している。研究の中心は宗教史、元朝史であったが、『中西回史日暦』、『二十二史朔閏表』(一部出土史料と相違の指摘あり)、『史諱挙例』、『元典章校補釈例』など、現在でも我々が研究の基礎として用いている工具書的な研究や、宋元時代の史料の補正・校訂を多数行い、さらに故宮では明清档案の整理に多大な貢献をした。その客観的な実証研究の背後には、科挙での失敗、塾での脱落など伝統的な経学からの距離、医師としての訓練や、キリスト教を通じての西欧の知への深い理解があると思われるが、しかしまた一面、彼は強い中華思想の持ち主でもあった。北京師範大学では、「(日本から)漢学の中心を中国に奪回せよ、北京に奪回せよ」と学生に檄を飛ばしたという。
 革命後も大陸に残り、教育者・政治家として全国人民代表大会常務委員、中国科学院歴史研究所第二所長等々の職を歴任、文革時には周恩来の保護を得つつ沈黙を守って切り抜け、1971年に91歳で他界。その4万冊を上回る蔵書は、現在北京図書館に収蔵されている。
 他にも『基督教入華史略』、1949年以前の論文を集めた著作集として、『陳垣学術論文集』第1集(中華書局,1980)などがあり、彼自身について書かれた論文・エッセイは十指に優に余るが、下に挙げる陳智超のものが代表的である。                                 

〔関連文献〕「陳垣伝略」『中国現代科学家伝略』1,山西人民出版社,1982.



(以上の文章のうち、馬端臨・陳垣は、弘文堂『歴史学事典』第6巻 「歴史家とその作品」(1997)の項目として執筆したものを、加筆集成したものです。引用の際は、原点におあたりください)



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